There She Goes

小説(?)

海を探す / There She Goes #48

LOVE FLASH FEVER

LOVE FLASH FEVER

 

しばらくなにも書かなかった。特になにか重要なことが起こったわけでもない。起こらなかったわけでもない。いつもと同じような日々が続いたのだった。平成最後の夏が始まろうとしている。世間は災害とオウムに揺れている。Twitter の画面を開いても麻原彰晃の話題ばかりでうんざり……。

もちろん麻原彰晃は重罪人だし、死刑の是非は重要なトピックだ。彼が多くの人々を殺したテロリストであること、カルトの指導者であることはハッキリしている。だけども、日常の重要な些事(と書くと矛盾する表現になるが)を疎かにしてまで語るべきことだろうか? 日常と地続きな形でそういう問題を語りたい。彼はそう思って、ふと今なら読めるかもしれないと中村文則『教団X』を手に取る。あるいは村上春樹アンダーグラウンド』『約束された場所で』も今なら虚心に読めるのかもしれない。東京に住んでいた頃、まさに地下鉄サリン事件に東京が揺れた思い出が懐かしい……。

あるいはこんな時だからこそいとうせいこう『ワールズ・エンド・ガーデン』や大江健三郎『洪水はわが魂に及び』は読み返されるべきなのかもしれないなと考える。高橋和巳邪宗門』は読んだことがないので(あと、ドストエフスキー『悪霊』も読んだことがない)、この機会に読んでみるのも一興かなと。

彼女とはしばらく連絡を取っていない。あれから LINE でも連絡がない。こちらから話すべき出来事も特にない。なにか送ってもどうせ既読無視されるのがオチだろうし……それで気分を変えて note で掌編を綴ったりしているのだった。

平成最後の夏か……平成を生き延びられたことを彼は不思議に思う。彼が 14 歳の頃昭和が終わり、それから震災とオウムで始まったような平成、あるいはフリッパーズ・ギターやたまが生み出したような平成を 30 年生きて来た。カフカが亡くなった 40 歳という年齢を追い越して生きていることが不思議に感じられる。あとどのくらいこの生命があるのか分からないけれど、その時その時を大事に生きよう、と考える。与えられた命を粗末にしないように……そう腹を括るのだった。