There She Goes

小説(?)

ふたりのイエスタデイ / There She Goes #41

ふたりのイエスタディ +9

ふたりのイエスタディ +9

 

ストロベリー・スウィッチブレイドの「ふたりのイエスタデイ」を聴いている。歌詞なんて気にしなかったのだけれど、調べてみてこれが失恋を歌った曲であることを知る。彼が体験した出来事も、結局はふられたということで片づいてしまうのだろうか……彼女は謎である。さながら AI のように…… Ghost In The Machine……

鈍い苦痛を感じながら春の午後を過ごしている……彼女の言葉を知りたい。彼女が語る言葉を聞きたい、彼女の綴る文字を読みたい……そんなことを考える。どうせ既読無視されてしまうと思うのだけれど。メランコリックなメロディが下手くそなギターとシンセサイザーでメチャクチャにされてしまうストロベリー・スウィッチブレイドの音楽が身に沁みる。それは儚い美しさ、青さを備えていて如何にも80年代……彼が手が届かなかった時代……あの時代だからこその輝き……例えばアズテック・カメラやペット・ショップ・ボーイズを聴きたくなるのだが……。

倦怠……やることなんてなにもない、ということを引き受けること……その大切さは丹生谷貴志から学んだはずだったのだが(あるいは中島らもからでも良いのだが)。そしてロラン・バルトを手にしようとするも活字が頭に入らないので諦めて Twitter でしばし気散じ……また彼女に会える時になにを話したら良いのだろうか、と考える。この「小説」のことを教えるべきだろうか? 彼女はどんな本を読んでいるのだろう? そこからでも接点が掴めないものだろうか? 彼女もまた「小説」を書いているという。それを読ませて欲しい、とお願いするべきだろうか?

And as we sit here alone
Looking for a reason to go on
It's so clear that all we have now
Are our thoughts of yesterday

「私たちがここでお互いひとりぼっちで座って、これ以上続ける理由を探すなら私たちが持っているものって昨日の思いだけだってことがはっきりするわ」。戯れに訳してみて、やはりしっくり来ないことに情けなさを感じてしまう。これが享楽的/ニヒリスティックな曲であることは伝わって来るのだが……彼と彼女の間にあったものも、「our thoughts of yesterday」というだけのことなのか? いや恋愛関係にあったわけでもないのだから、彼女には「yesterday」もなかったのかもしれないが。一体なにがあるのだろう?

四月になった。彼女の母親が忙しくなるので、彼を取り巻く支援体制はやや変わる。彼もまた、職場で長時間雇用の試験と面談を受ける覚悟を固めて明日試験を受けるつもりだ。日々は微妙にではあるが変化して行く。今日は昨日(yesteday)になる。エイプリルフール用のジョークも思いつかない……これ以上タイプするのを止めてノンアルコールビールを呑むべきだろうか? 今をどう生きるか……それは町山智浩『「最前線の映画」を読む』を読んでその大事さを痛感したところなのだけれど。恋の病(?)の厄介さ……。

稼ぎたい、という思いがある。早稲田を出て、今の仕事……薄給でその分責任の軽い雑用係。そんな現状に甘んじていた理由は結局アルコールに溺れていたから、ということがはっきりしている。アルコールを断って彼は前に進もうとしている。辛い思いはあるかもしれないけれど、ともあれ前に進むしかないのだった。自分より年の若い正社員に「選別」される屈辱も、今では耐えられるように思う。人生は自由自在なのだ、と……彼のような人生もあって良いのだ。好きなことをやり抜いた、読書や音楽鑑賞を精一杯やって来て充実した生き方が出来た人生もあっても良いのだ。ただ、ここに来てV・E・フランクルではないが人生に試されている気がする。今を生きなくては。

スパンダー・バレエ「True」を聴き a-ha「Take On Me」を聴き、自分の心も浮き足立って来たのを感じる。これをひとしきり書き終えたらまた川崎公平『黒沢清と〈断続〉の映画』を読むことに戻ろうか……黒沢清の映画のメロドラマ性について、『回路』を観直すかそれとも『予兆 散歩する侵略者 劇場版』を観てみるか。今の記録を正直に綴ると――それを「小説」として読ませて良いのかどうかは……知ったことか!――このような無為な文章で終わってしまう。伊藤洋司『映画時評集成』の感想文を綴ろうか。

So needless to say
I'm odds and ends
I'll be stumbling away
Slowly learning that life is ok
Say after me
It's no better to be safe than sorry

――a-ha "Take On Me"

 

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Instagram post by 踊る猫 • Mar 30, 2018 at 11:31pm UTC