There She Goes

小説(?)

ゆらめき In The Air / There She Goes #35

Aloha Polydor

Aloha Polydor

 

結局心臓が止まっちまえばナンボなんだよな……と思いながら最近生きている。どう生きようが、死んでしまえばそれまで。今この瞬間に心臓が止まるかもしれない。つまり Sudden Death だ。人生は努力次第でどうにかなるものではない、というのは今までの人生で嫌というほど学んで来たことだ。努力が必ずしも報われるものではないことは、これまでの人生で骨身に沁みて体験している。ただ、だからと言って努力をしないで生きることも無為なようなことのように思う。所詮人生死ぬまでのヒマ潰し。だと言うのであれば、努力してもしなくても同じなのであればしない理由なんて何処にあるのだろうか。努力する理由もない。だけれどもしない理由もない。だというのであれば、無為であってもし続ける人生があっても良いのではないだろうか。

今日はそんなことを考えながら、彼はジャレド・ダイアモンドのペーパーバックを買おうかどうか思案に暮れた。お金の使い方が分からないのでどうしたら良いのか悩んでいるのだった。発達障害者はこういうことに不器用なので、せいぜい LINE のグループトークで叫ぶしかないのだった。これまでバカみたいに買い込んで来た本が一杯あるにも関わらず、散財しないと気が済まない。宵越しの銭は持たないという性分なので、手持ちのお金はあるだけ使ってしまってスッキリという性格なのだった。直さなければならないのだろう。

彼女とお会いする機会があったのだけれど LINE の既読スルーについて「グループトークでお話ししていただければ(私個人宛ての内容であっても)」という話なので彼女に個人宛で LINE のメッセージ送信を行うことは控えるようにしないといけないと思ったのだった。このあたり彼女と彼との温度差が違う。彼はパーソナルな事柄は個人に宛てて送るのだけれど、彼女はそういうことをパブリックに明かしても良いということなので考え方の違いというか、分からないことがあるものだなと唸らされてしまう。まあ、人それぞれということなのだろう。

彼は自分の眼前に居る人々を――その是非はともあれ――凄いと思ってしまう。彼は自分のことを凄いと思ったことは一度もない。なんだかなんの取り柄もないまま今まで生きて来たように思っている。大学は早稲田まで現役合格で行ったのだけれど、自分がそんなに頭が良いとも思っていない。仕事が出来る人は彼以上に沢山居るし、論理的思考が出来る人も彼女を含めて沢山居る。読書量も人と比べれば少ない方だろう。その意味で、彼は多分突出した才能を持っていないと思う。彼にあるのはむしろ過剰なほどの欠落だ。なんにもない……平々凡々たる人間のみが持ち得る能力。そんなものがあるのだろうか。

彼はそりゃ本を読むし音楽を聴くし映画も観るのだけれど、それは「オベンキョウ」としての娯楽ではない。そんな「オベンキョウ」なんて真っ平御免だ。前に「『ファーゴ』も観てねえのか」と叱られたことがあるが、別にいつ出会おうが勝手ではないか。たまたま彼の人生において『ファーゴ』と出会うタイミングがなかっただけのことだ。裏を返せば彼はエルンスト・ルビッチの映画を観るのだけれど、それを威張ろうと思ったことは一度もない。芝山幹郎さんの本に誘われて観ただけなので特に凄いことだとも思っていないのだった。

世の中には「岩波文庫を全巻読もう!」というノリの方も居られるのだが、彼はそうではない。その証拠にこれまでトルストイバルザックも読んだことがない。心地良い文章を読み進めて行く内にこういう人間になってしまったからであって、根性があるとか努力しているとかそんな話ではないのである。興味の赴くがままに読んでいたらこうなった……それを威張れるだろうか。好きなことを好きなようにやるだけ。ゲームをやるのと同じような感覚だ。それを威張ったりする人は居ないだろう。誰と競い合うでもなく、静かに本を読んで自分を深めるだけ……。

今日はジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』を辛うじて買うところだった。 

Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies

Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies

 

英語のペーパーバックを読んでいることを知られると、カッコ良いとかそういう風に言われるけれど「んなこたーない」なのである。彼自身飛ばし読みで読んでいるので何処まで身についたか危ういところがある。増して会話力となるとお手上げである。十年間英語を勉強して来たのに一体なにをやっていたの……という体たらくである。これについてはまたいずれ書く機会があるだろうから今は書かない。ともあれ、自分が凄いと思ったことは一度もない。負けず嫌いというのは彼の性分としてあると思うけれど、白旗を揚げるのも勇気のひとつだと思っている。

彼女とは脈がないみたいなので、引き際をどうキメたら良いのか分かり兼ねている。ここは彼の側からそっと離れて行くのが吉なのかなあ……と思う。ただ、話をさせていただく相手になって貰うこと自体は図々しいだろうか? それも踏まえての個人宛 LINE なのだったが、相手が迷惑そうなので止めることにした。まあ、そのあたり謎は深まる一方である。「この人はこういう人」と価値判断をカッコに入れてつき合うと人とのつき合いはかなり easy になるということなので、彼自身彼女の心無い言葉に一喜一憂せずブレない対応を心掛けているところだ。それが上手く行くのかどうかは分からない。